教員紹介

窪 幸治 (くぼ こうじ)

職名
准教授
専門分野
民法学,消費者法
担当科目
民法I~III,法学

研究最前線(コラム)

消費者の利益を増進するために 法は何をできるか

研究テーマ

契約や所有、家族関係に関するルールはどうあるべきかを考えたり、最近は具体的な消費者問題を法的に解決するにはどうしたらよいか、みんなで議論しています。

ゼミ生の卒業論文のテーマとしては、次のものがあります。学部の性格を反映して、いわゆる民法・消費者法より広く、労働法、知的財産権法に関心をもつ学生にも対応しています。

  • 民法722条2項における「被害者」の範囲について
  • パロディから考える著作権法のゆくえ
  • 自転車事故と責任保険
  • 離婚後の親子関係について
  • 親権制限の在り方について
  • 「モノのパブリシティ権」に関する考察
  • 抵当権の物上代位の範囲

ゼミは、3年生の段階では、法学部スタンダードの判例研究を行うほか、現在が民法典のリフレッシュ期にある利点を生かし、実際になされている法改正の議論(たとえば、大きなところで債権関係(契約法)や相続法の改正)の内容を追うことを行っています。

進め方は毎回、検討する判例や改正条文・制度を決め、割り当てられた報告者に報告してもらい、 他のゼミ生と教員で質問したり、意見を言って、理解を深めていくというものです。

その作業を通じて、法文において、集積された判例がどのように表現されるのか、微妙な言葉遣いの 差異が意味するものは何か、また実務の具体的ニーズがどのように反映・調整されるのか、法解釈という行 為自体を深く理解できるのではないかと考えています。

そして、4年生になると卒業論文を作成するために個別のテーマを選定し、それを追究してもらうた め集中的に裁判例や学説を読みこなし、批判し、まとめる作業をこなしていくことになります。 それを各人が発表して、みんなで議論する形になります。

なお、テーマ選定は、ゼミ決定の時点での問題意識をそのまま持ち続けてそれに見合うものとする学生、 3年生の時点で報告した内容を突き詰めようとする学生、 その時々の社会問題に着目して民法で解決できないか模索する学生に三分されていると思います。 いずれにしても、社会に対してもつ問題意識が大なり小なり反映されていて面白いです。

現在の研究課題、研究活動

契約の拘束力が認められるために、何が必要なのか、あるいは解消するに足りる条件はどのようなものか、について関心があります。

たとえば、「合意は守られるべし」、自ら意思決定したからそれに拘束されるのは当然である、という考えは自明なようで、同時に、実際の取引においては当事者の一方が事前に見ることすらない約款を契約内容として認める現実には適合していません。このような約款の取扱いは、現実的な必要性からすれば否定できないけれど、理屈にはうまくはまらないわけで、どう考えたらいいだろう、という学生時代の素朴な疑問が出発点としてあります。

もちろん現在では、どれだけの内容を事前に開示すべきか、どの程度の合意があればいいのか、一方的な内容はどこまで契約内容として認めるべきか、といった議論がなされており(改正案にも少し盛り込まれています)、研究対象はもう少し精緻なものにはなっています。

最近取り組み始めた具体的な研究内容としては、次の3つがあります。

(1)継続的契約の任意解除

財産の管理をお願いするような契約(委任)では、基本的に依頼者(委任者)の側でいつでも自由(任意)に契約をやめることができるとされ(民法651条)、その理由には信頼の置けなくなった相手方(受任者)に仕事を任せ続けたり、不要となった仕事を出し続けるのは無用であることなどが挙げられています。しかし、それで説明は十分なのか、無理がある場合があるのではないか、あるいは継続的に物を購入する契約(売買)でも同じことが言えるはずだけど、広げることはできないのかなどの疑問が生じ、それを外国の法律とも比較しながら検討をしている最中です。

(2)消費者契約法10条における信義則

企業(事業者)と消費者の間で締結される消費者契約は、 情報の質・量、分析力、そして取引交渉力に大きな格差があり、民法等で認められたルールより事業者側に一方的な有利な契約が定められた場合、消費者は一定の是正を求める権利が認められます。その際に、問題ある契約条項を細かく法文に書き込み、わかりやすく明示するもの以外に、新しく出てくる問題ある契約条項に対処できるように一般的な形で契約条項を排除するものとして消費者契約法10条という規定があります。同条は、単に民法等のルールから逸脱することに加え、信義則(ざっくり言うと、相手方に対して与えた信頼を裏切らないよう行動すべき、とする原則)に反することも要求していますが、どういう場面を想定しているか不明確で、実際の消費者・団体が使いづらいものとなっているため、その具体化を試みています。

(3)フランス民法におけるcause概念廃棄と日本への影響

現在の日本法の解釈(論)は、立法の際や解釈論を打ち立てる際に参考とした国の法(母法)の影響を受けています。母法の一つであるフランス民法が有していたcause(目的)概念は、一部の日本法の解釈・学説に影響を与えてきたのですが、2016年の改正で削除されました。そこで、同国における削除に至る議論、その影響(実際は別概念でわかりやすく説明する方向がとられているようです)を参考に、今一度現在の影響を受けた日本法の解釈論を再評価してみようとするものです。

以上、結論が見えていない段階ですが、(1)(3)は理論的研究(理屈をこねる)で比較的時間がかかりそうな見通しですが、(2)などは実践的な意味合いをもち、早く仕上げて消費者団体の活動で活用できたらと考えています。

社会活動(学外の委員会活動,学会委員活動,NPO理事など)

  • 雫石町情報公開・個人情報保護審査会委員(2016年~継続中)
  • 岩手県准看護師試験委員(2016年~継続中)
  • 盛岡西警察署協議会委員(2013年~継続中)
  • 岩手町情報公開・個人情報保護審査会委員(2009年~継続中)
  • NPO法人 消費者市民ネットとうほく 検討委員会メンバー(2013年~継続中)

教育のポリシー

法は、各種理念・利益の衝突を調整した結果、つまり単純の一つの考え方のみで成り立っているわけではなく、多様かつ複雑な考え方による方程式を成しているものといえます。あるいは、実際にある社会の価値観とあるべき姿・理想のせめぎあう絶妙な位置を示すものであり、踏まえるべき調整点を示す原則や理念を理解することにほかならず、法を理解することは社会そのものを理解することにつながると言ってよいでしょう。

したがって、法とは何か、個別の条文の解釈を理解するだけでなく(もちろんこれ自体は最低限必要なものです)、より広く法典、法体系全体での位置づけ、そして社会における意義につき意識的になってもらい、それによって現在起きている法的問題(人権や公正社会の実現にも関連する)に敏感になり、また社会に新たに生じる紛争へ対処しうる能力を身に付けてもらいたいと考えています。

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