研究最前線

企業にとって最適な経営戦略を模索し、提案する

近藤 信一(プロフィール

私の研究スタイル

私の研究スタイルは「定性的実証研究」というもので、実証研究とは、「現場」を重視した研究になります。私の場合は、経営学ですから、企業活動の現場を重視しています。そして、定性的、つまり統計などように数値化できないデータ活用して研究しています。私の場合は、数値化できないデータとして、企業の経営者などに対してインタビュー調査を行い、データ(インタビュー調査内容がデータになります)を集めて、集めたデータを活用して研究をしています。したがって、県内各地はもとより、東京や大阪など日本各地、さらには中国や東南アジアなど海外まで出かけて、企業の経営者や幹部社員にインタビュー調査を実施しています。

大企業の経営戦略に関する研究

私が現在取り組んでいる研究は、大きく二つに分かれます。1つ目は大企業の経営戦略に関する研究で、もう1つは中小企業経営に関する研究です。

写真 中国のインターネット販売大手「百度」の宅配バイク
出所)筆者撮影(2016年3月21日)

1つ目の大企業の経営戦略に関する研究では、日本企業の海外展開、特に中国や東南アジアにおける活動に関する国際経営戦略という研究と、日本企業がこれまでに行ってきていない新しい市場(マーケット)に参入するための市場戦略という研究を行っています。国際経営戦略の研究では、日本企業が中国におけるIoT(モノのインターネット、Internet of Things)関連のビジネスにどのように参入していくべきなのかを研究しています。

この研究では、日本企業が中国企業と連携する必要や技術流出を恐れることなく参入する必要があることが分かりました。市場戦略の研究では、日本企業、特に村田製作所やTDKなどの電子部品メーカーがIoTという新しいビジネス分野に対してどのように取り組んでいくべきなのかを研究しています。この研究では、日本の電子部品メーカーが新しい技術を開発することよりも現在ある既存の技術の応用でビジネスをしていることなどが分かってきました。

中小企業に関する研究

もう1つの中小企業に関する研究では、FacebookやLineなどSNSの普及など進展が著しいITを活用した中小企業同士の連携の新しい形について研究と、岩手県内のモノづくりを行う中小企業がIoT・VR(仮想現実)・AR(拡張現実)・AI(人工知能)などの新しい技術にどのように対応し、どのように取り込んでいくべきなのかを研究しています。中小企業の新しい連携の形についての研究では、ITというデジタル技術を活用した連携はこれまでになく連携を深めることが出来るが、そのためには経営者同士や社員同士など連携する企業同士が日頃からリアルに(現実的に)交流をする必要、つまりアナログな連携が信頼の熟成には欠かせないことが分かりました。岩手県内のモノづくりの中小企業の新しい技術の利活用の研究では、岩手県の中小企業が新しい技術を自社で利用する場合と、新しい技術を活用して新しいビジネスを生み出す場合に分れることが分かってきました。

企業に寄り添い経営課題解決に貢献したい

経営学は実践的な学問です。企業の現場に行き、それぞれの企業が抱える経営上の課題を把握する。そして、把握した経営課題に対して経営戦略論の立場から最適な経営戦略を模索し、提案する。私は、企業に寄り添いながら実践的な研究を続けています。

(2017年3月)

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