震災の経験をどのように語り継ぐか?
記憶の伝承や語りのあり方を考察し、社会の理解を深めたい。
田中 伊織さん
総合政策研究科入学のきっかけ
私は、卒論で取り組んだ震災伝承における語りの正当性や担い手のあり方についてさらに深めて研究したいと考え、総合政策研究科へ進学しました。震災伝承の手段やそのあり方について研究を進める中で、震災非経験者が活動に関わる際の葛藤や困難に着目するようになりました。なかでも、震災非経験者でありながら語り部活動に携わっていた方へのインタビューを通じて、「自分に語る資格はあるのか」という葛藤や、被災者との距離感に悩む姿に触れたことが、研究テーマの核となっています。これより、震災伝承は単に経験を語り継ぐものではなく、「誰が語るのか」という問いとも深く関わることを実感し、この課題をより深く探究したいと考えるようになりました。
研究内容の紹介
研究では、震災非経験者の語り部が、震災の体験や記憶について語る際には、語りの「正当性や真正性(オーセンティシティ)」がいかなる条件のもとで成立し得るのかを明らかにすることを目的としています。特に、震災非経験者が語り部として活動する中で生じる「自分に語る資格はあるのか」という葛藤や、語りが受け止められる場合とそうでない場合の違いに着目します。そのうえで、語り部や関係者へのインタビューを通じて、語りの受容のされ方に差異が生じる背景や要因を整理し、震災伝承における語りの成立条件を多角的に考察していきます。
研究をどのように活かしていきたいか
本研究を通じて得られる「語りの成立条件」や「記憶を伝える際に生じる困難に着目する視点」は、震災伝承に限らず、教育や地域活動などにおける記憶の継承を考える上でも有用であると考えています。特に、多様な立場の人々が経験や記憶の継承にどのように関わり得るのかという点について、本研究の知見は、その理解を深めるためのひとつの視座を提供するものと考えています。こうした視点をもとに、記憶の継承や語りのあり方をめぐる課題について、社会的・学術的な考究を続けていきたいと考えています。