教員紹介
桑原 尚子 (くわはら なおこ)
- 職名
- 准教授
- 専門分野
- 国際協力論,比較法学,イスラーム法
- 担当科目
- 国際協力論I・II,法律・行政実習,海外フィールドワーク
- 学位
- 博士(学術)
研究最前線(コラム)
政教分離の前提を超えて、法制度を読み解く―ムスリム社会における宗教的権威と国家統治―研究テーマ
―世界を変えるのは、力ではなく「ルール」かもしれない―
戦争のあと、独裁体制のあと、急速な経済発展のあと。社会が大きく変わるとき、その国の将来を左右するのは「どんなルールをつくるか」です。
私は、アジアや中東などの国々を対象に、法律や裁判のしくみづくりを支える国際協力の現場を踏まえながら、それらを比較する研究(比較法学)を行っています。
法律は、単なる条文の集まりではありません。その社会が何を大切にし、どんな社会を目指しているのかを映し出すものです。だからこそ、ほかの国のやり方をそのまま当てはめるのではなく、その国の歴史や文化、人々の価値観に目を向け、「なぜそのルールが生まれ、どのように受けとめられているのか」を丁寧に読み解いていきます。
ルールを理解することは、その社会を理解することでもあります。グローバルな課題を考えることは、私たちの地域社会を考えることにもつながっていきます。世界の課題と向き合いながら、国際協力のあり方を具体的に考える学びに、関心をもってもらえたら嬉しく思います。
現在の研究課題、研究活動
世界の国々で「法(ルール)」がどのように社会を支え、人びとに受けとめられているのかを研究しています。現在は、主に三つのテーマに取り組んでいます。
第一に、ソ連解体後の中央アジアにおいて、社会主義の計画経済から市場経済へと体制が大きく転換する中、法制度がどのように再構築されたのかを研究しています。経済や政治の仕組みが変わるとき、財産権や契約、裁判制度といった基本的なルールも変化します。体制の転換と法制度の再設計との関係を比較法の視点から分析しています。
第二に、イスラームを大切にする国々で、宗教的な権威や宗教法が、国家制度の中でどのように位置づけられ、再編されているのかを研究しています。宗教と国家は単純に対立するのではなく、法制度の中で組み合わされながら新しい形をとることがあります。その動態を理論的かつ実証的に明らかにしています。
第三に、イラクやカンボジアなど、紛争や独裁を経験した国々が、過去の人権侵害や不正義にどのように向き合い、新たな法制度を築こうとしているのかを研究しています。国際社会が示す「正義の基準」と、現地の宗教や慣習といった規範がどのように関わり合い、制度として機能していくのかを比較しています。
これらに共通する問いは、「法は、どのようなときに社会から正統なものとして受け入れられるのか」ということです。法を通して、政治、宗教、歴史、そしてそこに生きる人びとの世界観を読み解いています。
社会活動(学外の委員会活動、学会委員活動、NPO理事など)
- アジア法学会理事(2026年4月現在。以下同じ)
- 盛岡市国際交流協会理事
- 一関市空家等対策協議会委員
- 一戸町総合計画審議会副委員長
- 一般財団法人日本民間公益活動連携機構(JANPIA)・「京都の若者の段階的就労支援プロジェクト-地域のつながりを生かした仕事と生活の支援を増やす-」事業・評価アドバイザー
教育のポリシー
私はこれまで、紛争後のイラクや、社会主義体制から移行するウズベキスタン、タジキスタンなどに駐在し、国際協力実務に携わってきました。その経験の中で感じたのは、社会を動かしていくのは制度そのものというよりも、それを担う「人」であるということです。
道路や建物は比較的短い時間で整備できますが、人を育てることは時間がかかります。それでも、長い目で見れば、人を育てることが社会を支えていく基盤になると考えています。
教育において大切にしているのは、多様な価値観に耳を傾けること、当たり前をそのまま受け入れずに問い直すこと、そして現場に立ち自らの目で確かめること(百聞は一見に如かず)です。
社会の課題に向き合うとき、すぐに明確な答えが見つかるとは限りません。だからこそ、物事を丁寧に見つめ、学問の方法にのっとって考え続ける姿勢を重視しています。異なる立場や価値観をもつ人とも落ち着いて対話しながら、それぞれの場所で社会を支えていける人材を育てていきたいと考えています。
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