教員紹介

伊藤 浩紀 (いとう ひろき)
- 職名
- 准教授
- 専門分野
- 金融商品取引法,会社法
- 担当科目
- 会社法,商取引法,法律・行政実習B
研究テーマ
私たちの社会は、数多の企業による財・サービスの生産活動や、こうした活動を資金面で支える証券市場・金融市場の活動によって成り立っています。商法は、企業組織・企業取引や、証券市場・金融市場を規律・規制する法律です。ゼミでは、企業組織や証券市場に対する規制の中核をなす会社法および金融商品取引法(以下、「金商法」といいます)を中心に、判例研究や時事問題・法改正の動向を調査・考察しながら、商法の現代的課題を研究していきます。
現在の研究課題・研究活動
開示規制のエンフォースメント制度のあり方
企業の大多数は「会社」という組織形態で運営され、その大部分は株式会社が占めています(以下、単に株式会社の意味で「会社」といいます)。会社は、財・サービスの生産という企業活動を行うため、多額の資金を必要としています。その資金調達の手段の一つが株式の発行であり、国内外から資金を集めるため、東京証券取引所等の設置する「市場」に株式を上場することで、日々多数の投資者が株式を売買できるようにしています。もちろん、学生のみなさんも、(お金があれば)いつでも買うことができます。
ところで、会社が発行する「株式」という金融商品は、食品、自動車、電化製品のような製品とは異なり、人間の知覚で価値を判断できる商品ではありません。すなわち、株式は、その発行する会社の事業内容や業績等の情報がなければ売買することができない商品であり、「株価」は、そのような情報にもとづき、投資者に日々売買されることで形成されているのです(「日経平均株価」という言葉を聞いたことがある人も多いでしょう)。このため、金商法は、株式を売買するために不可欠な情報の開示を会社に義務づけています。
しかし、もし会社が自社の売上や利益を水増しするなどといった虚偽の情報を開示していたとすれば、どうなるでしょうか。そのことが発覚すると、投資者は、株価が暴落するなどの大きな損害を被ることがあります。また、そのような虚偽の情報が蔓延した市場では、一般の投資者が株式を安心して売買することができませんし、会社も株式を発行して巨額の資金を調達することが困難となります。この場合、必要な財やサービスの生産販売がされなくなるなど、円滑な企業活動に影響が及ぶのみならず、金融・経済社会が成り立たなくなることも懸念されます。
このような問題意識の下、私の研究では、虚偽の情報により損害を被った投資者に対する会社の賠償責任(いわゆる民事責任)の制度を中心に、合理的な開示規制のエンフォースメント制度のあり方を検討しています。このような研究を通じ、投資者が安心して投資活動を行える市場環境の整備に貢献できればと考えています。
社会活動(学外の委員会活動、学会委員活動、NPO理事など)
- 日本証券業協会 第9期客員研究員(2022年4月~2024年3月)
- 消費者問題に関する研修事業における講演(2022年12月、2025年2月)
所属学会等は、教育研究者総覧をご覧ください。
教育のポリシー
学生の皆さんにとって、商法や会社法の制度やその背景を理解することは、必ずしも容易ではないと思われます。そのため、講義では、新聞・雑誌等の記事や、上場会社が提供する株主総会書類・ディスクロージャー資料を活用することで、さまざまな規制の内容を理解しやすくなるように努めています。