教員紹介

大和田 悠太 (おおわだ ゆうた)
- 職名
- 講師
- 専門分野
- 政治学
- 担当科目
- 政治学,政治過程論
研究テーマ
政治とは何か、デモクラシーとは何か。この極めて原理的な問いを意識しながら、現代日本政治を理論的・実証的に分析しています。デモクラシーは、私たちの自由な生き方を支えている枠組みですが、ときに暴走し、人々の自由を奪います。少なくとも放っておいて上手く機能するものではなく、何らかの条件が必要です。そこで重要になる要素の1つに、市民社会(政府からも営利企業からも自律的に生まれる様々な社会関係、団体活動)があります。この市民社会論が私の研究の最大の関心です。ここ数年、私自身が研究してきたのはNPO法人や生協ですが、私たちが何気なく営んでいる非常に小さなレベルの人間関係やコミュニケションの特徴も実はデモクラシーを支えている(あるいは逆に掘り崩している)ということも見えてきます。
すでに以上からわかるかもしれませんが、政治学が扱う対象は広いです。政治家がやっていることを研究しているのが政治学だという誤解は、政治学の授業の第一回でただすものです。市民社会論のみならず、最近は家族や学校、企業の政治学といったテーマも論じられています。政治学に固有の研究対象なるものはありません。様々な対象を、政治学的な見方・考え方から、どう見えるか考えることができます。そのことは基本的には経済学や法学などでも同じで、諸学問は対象でなくアプローチで定義されるものでしょうが、それぞれの物の見方・考え方には個性があります。私は、政治学のそれに魅力を感じ、意義深いものと考えていますが、それを少しでも学生に伝えられればと思います。学生には、何より自分自身の問題意識を大事にして、研究テーマを練り上げてほしいと思います。それがどのような対象を扱うものでも、政治学のテーマになりうるはずです。
現在の研究課題・研究活動
教員が現在進めている研究としては、以下の3つがあります。
(1)公共利益団体の形成、維持に関する理論的・実証的研究
様々な利益=関心に基づいて組織をつくり、政治に働きかける活動は、デモクラシーの生命線です。しかし、非常に多くの人に関わる利益こそ政治的組織力が小さくなりがちだというパラドックスが、現代政治学の理論では明らかにされています。そのようななかで、どんな工夫が可能であり、諸利益のバランスがとれた政策決定が可能か。公共利益団体の典型と言われる消費者団体を事例に研究しています。
(2)市民社会組織のメンバーシップと法制度環境に関する多国間比較研究
市民社会組織は、人々がつくる自由な結社(アソシエーション)ですが、根底的な部分において法制度の影響を大きく受けます。1990年代以降、NPO法の立法や公益法人制度改革などが次々となされたのは、そのことを強く意識してのことでした。それから30年弱が経つ今、これらをどう評価できるか。国際比較の視点を導入して論じています。
(3)生活クラブの代理人運動と市民政治ネットワークに関する比較政治学的研究
市民社会の運動が政党に発展する場合のダイナミズムにも注目しています。その視点から行っているのが、生活クラブ運動の歴史を背景に生まれ、市民自治を目指すローカル・パーティーとして発展してきた市民政治ネットワークについての研究です。それぞれの地域ネットに、ユニークな歴史があります。その多様性を比較政治学的な分析枠組みから捉えるとともに、そこからみえる自治体レベルの政治制度の課題について考えています。
教育のポリシー
すぐに役に立つ知識は、すぐに役に立たなくなるとは、しばしば言われることです。批判的思考力といった基礎の部分は究極的には最も役立つと思われるので、そこは高度なレベルにまで鍛える場をつくりたいと思います。知性は対話的な営みのなかで生まれるとも思いますので、それは活発な討議の場とします。加えて重視したいのは、メタ次元の思考力(○○を考えるということに対して、考え方を考えるとなるとメタ的です)。考え方についての認識がアップデートされると、考えることが上手くなるはずです。思考力とともに判断力も大事です。古代ギリシア哲学以来いわれてきた、実践知(フロネーシス)の重要性です。
以上のようなものは非常にジェネラルなスキルですから、なにも政治学で学ばなくてもよいではないかと思うかもしれません。ただ、政治学の歴史には、こういった知恵が詰まっているとも思います。そのような学びを踏まえつつ各自が自由を生き抜く知性をもって、主体的な生き方を追求し、進路を模索し、目標を実現していくことを、精一杯応援したいと思います。