研究最前線
企業の「独自の仕組み」を解明し、持続可能な地域の未来をデザインする
私の研究スタイル
写真:株式会社アイオー精密HP
私の研究スタイルは、数値データだけでは捉えきれない経営の現場を重視する「定性的実証研究」です。特に、ある企業がなぜ長年にわたって独自の強みを維持できるのか、その背後にある「目に見えない成功の論理」を解明することに力を注いでいます。
現場でのインタビューや資料調査を通じ、経営者がどのような意図で組織を動かし、独自の強み(持続的競争優位)を築き上げたのか。その因果関係を解き明かしていくのが、私の研究です。
現在、私が取り組んでいる主要な研究テーマの一つが、製造業における「ビジネスシステム」の変革です。
現代のモノづくり現場では、「コストを抑えて安く作る(効率)」ことと、「多様なニーズに素早く応える(柔軟性)」という、一見すると矛盾する課題を同時に解決することが求められています。私は、株式会社ミスミや、小原歯車工業株式会社、岩手県内にある株式会社アイオー精密のような優れた企業を対象に、この難題をクリアしている独自のオペレーションを分析しています。
例えば、小原歯車工業株式会社や株式会社アイオー精密の事例では、単に最新設備を導入するだけでなく、ITを駆使した緻密な管理システムと、現場の職人による「アナログな創意工夫」を極めて高い次元で融合させています。経営者がどのような戦略を描き、現場の知恵をいかにして組織全体の強みへと変えていったのか。その構築メカニズムを解明することで、これからの日本の製造業が目指すべき新しいモデルを提示しています。
大学を核とした「ゆるやかなネットワーク」で地域を活性化する
もう一つの柱は、隣県の宮城大学を事例に、大学を核とした「地域ビジネス・エコシステム(生態系)」の構築に関する研究です。ここで注目しているのが、社会ネットワーク理論における「弱い紐帯(ちゅうたい)」という概念です。
地域社会において、大学は特定の利害関係に縛られない「ゆるやかなつながり」を多くの組織と持っています。この「弱いつながり」こそが、異なる分野の企業や行政、学生を繋ぎ、新しいアイデアや協力関係を生む「架け橋」となります。
大学がこのネットワークの核となり、地域の課題を共有し、共に解決策を探る場を提供することで、地域全体に信頼の貯金(社会関係資本)が貯まっていく。そんな持続可能な地域の仕組みをどう活性化させるかを追究しています。
本研究の成果は「大学におけるビジネス・エコシステムの構築メカニズム-弱い紐帯の活性化メカニズムの視点から-」としてグローバルビジネスジャーナル誌に掲載されました。
現場に寄り添い、地域の未来をデザインする経営学を
経営学の本質は、現場に眠る「成功のヒミツ」を解き明かし、次の一手へ繋げる実践力にあります。私は企業に寄り添い、現場の知恵を「確かな戦略」へと形にすることで、実際の課題解決に貢献したいと考えています。さらに、大学を拠点とした「ゆるやかなネットワーク」の構築を通じて、新しいアイデアや協力関係が次々と生まれる地域社会の実現を目指します。理論と現場を絶えず往復しながら、持続可能な地域の未来をデザインすることに貢献していきたいです。
(2026年4月)
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